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北陸でおとずれたモジュラーシンセの転換期。「み ん な の 総 会」主催・kenjiyamaneさんインタビュー

2025-11-20
in Event
北陸でおとずれたモジュラーシンセの転換期。「み ん な の 総 会」主催・kenjiyamaneさんインタビュー

2025年9月13日、福井・Casaにて福井県発となるモジュラー&マシンライブイベント「み ん な の 総 会」が開催されました。ヘッドライナーに中尾憲太郎さんを迎え、北陸のプレイヤーが一堂に会したこのイベント。当日はさまざまなプレイヤーの個性がぶつかり合い、盛り上がりを見せました。

今回Patching for anythingは、「み ん な の 総 会」を主催したモジュラーシンセプレイヤーのkenji yamaneさんにインタビュー。モジュラーシンセとの出会いから、「み ん な の 総 会」開催のきっかけ、そして新たに立ち上がった北陸の電子楽器コミュニティ「マシンライブ北陸」まで、yamaneさんの活動をクローズアップします。


最初のモジュラーシンセは「自作だった」。電源を入れ、脳に衝撃が走った

kenji yamaneさん(以下、yamaneさん)がモジュラーシンセを始めたきっかけは、2020年にさかのぼります。

もともと福井を拠点に「jongha」というニューウェーブバンドで活動していたyamaneさん。しかし、コロナ禍で停滞。時間に余裕ができたこともあり、「以前から気になっていたモジュラーシンセを自作してみよう」と思い立ったそうです。

「もともとエフェクターをつくっていたことも後押ししました。ハンダごてにアレルギーがなかったので、自作することへの心理的なハードルは高くなかったです。Kicad(※1)とか新たに学ぶことも多くありましたが、当時はそれも含めて楽しめていました」

※1:回路図設計から基盤レイアウト、製造用データまでを一貫して行える無料ツール

自作したモジュールで初めて音を出したときは「脳に衝撃が走った」といいます。

「ヘッドホンを通して視床下部をスプーンでなでられるような…わかりますか?」

なんとなくわかります(笑)

「ギターをフルテンで鳴らすのとは、また違う”初期衝動”があったのを覚えています。最初につくった音の出るモジュールは、CEM3340(※2)を使ったアナログオシレーター。当時はシーケンサーなどは持っていなくて、オシレーターのツマミを操作するだけでしたが、それでも強烈でした」

※2:「SH-101」や「Prophet-5」などのオシレーターに用いられていたICチップ


ライブ活動を続けるうちに、同志が増えた

モジュラーシンセを使ってミニマルテクノを軸としたプレイをするyamaneさん。現在のスタイルはSurgeonからの影響が大きいそう。

「DJ AKUAなどもよく聴いています。ロウテクノっていうんでしょうか? 最近では、Engineerの動画も好きでした。また、地元のクラブ・Casaのオーガナイザーやオーナーさんから、Petre InspirescuやRhadooを教えてもらって聴いています」

ライブでは、モジュラーシンセにあらかじめパッチングをしておき、フレーズやキック・スネア・金物を足し引きする即興スタイルで演奏を展開。

「できるだけ機材を減らしたい。そういった制約のなかで、どこまでできるか探るのもおもしろいと思っています。物理的な制約はモジュラーシンセの基本の楽しみ方って気がします」

モジュラーシンセを使った音楽活動。周囲はどのような反応だったのでしょうか。

「始めたときは完全にひとりぼっちでした。福井でモジュラーシンセを使ってライブをしている人は本当に私一人だけだったので」

しかし、知り合いにライブの出演交渉をしたり、自らライブを続けるうちに、徐々に声をかけてもらえるようになったそうです。

「地方あるあるだと思うのですが、そもそもプレイヤー人口が少なくて…。基本的にジャンルがごちゃ混ぜのイベントにも出さしてもらっていて、いろんな出会いがあります。福井だとそれが当たり前って感じですね」

ライブ活動を続けるうちに、モジュラーシンセに興味を持つ人も増えてきました。

「同じく地元のYY-KKさんをシンセ沼に引きずり込んだりして、いつのまにか2人セットで呼んでいただくことが多くなりました。現在では県内に4~5人ほどのプレイヤーがいます」

「ローカルで活動することは、そこまで不利ではない」とyamaneさん。

「ネットで発信できることもあって、コツコツやっていればいつかは『一緒にやろうよ!』って声をかけていただけるんです」

去年、東京・柴崎modで開催されたモジュラーイベント「modular club」に出演したときも、突然のオファーだったのだとか。

「いきなりmod店長の中里さんからDMが来て…そういったオファーはいったん、二つ返事で『やります!』って返すようにしています(笑)」


福井初のモジュラー&マシンライブイベント、開催のきっかけ

去る9月13日。yamaneさんは、福井Casaでモジュラー&マシンライブに特化したイベント「み ん な の 総 会」を開催しました。

「とにかく、自分の理想のイベントをドデカくやってみようと思いブッキングしました。ヘッドライナーに中尾憲太郎さん(ex. NUMBER GIRL)を、そしてBuchlaユーザーでもあるCasaのオーナー・光山さんに真っ先にオファーをしました。地元で一緒にやっているYY-KKさんと、変則インストバンドのTR/HEや、以前から交流のあった富山のモジュラーシンセ・プレイヤー、kenji hamadaさんにも出演していただきました」

福井県ではこれまでに前例のないイベントでしたが、当日は主催のyamaneさんも圧倒されるほど盛り上がったそう。

「シンセサイザーのイベントは、あまりジャンルでくくれないのがいいと思っています。テクノのイベントでもないし、電子音楽のイベントというと広義的すぎる。なにかわからないけど興味深い、独特な空間が作れたなと思っています」

ところで、「み ん な の 総 会」というユニークなイベント名はどうやって生まれたのでしょうか。

「バンドをやっていたときから、福井の地元レーベル『FUKUINVADERS(フクインベーダーズ)』にお世話になっていました。そのレーベルの定款(会社の基本情報を記した書類)に“年に一度、役員による総会を開催する”という条文があって。でも、会議室で机を突き合わせても何をやればいいのか分からない。それならいっそイベントとして、みんなを巻き込んでやってしまおうと。それが『み ん な の 総 会』という名前の由来なんです」

福井はもちろん、北陸エリアでもめずらしいモジュラーシンセやマシンによるライブ。「み ん な の 総 会」で印象的だったことについて伺いました。

「モジュラー&マシンライブのみのイベントとして開催しましたが、福井という土地柄からすると豪華かつニッチなイベントでした(笑) 来場者の方々からは“良いイベントだったね”と言ってもらえましたが、一方で地方で動員があるイベントをつくり、続けていくことの難しさも痛感しました。今後は福井のシーンでしっかり続けていけるよう、もっとごちゃ混ぜに、ノンジャンルでやっていけたらと思っています」


「マシンライブ北陸」発足。富山・金沢・福井がパッチケーブルでつながる

試行錯誤を繰り返しながらも、精力的に活動するyamaneさん。そのエネルギーの源流には“モジュラーシンセを福井に根付かせたい”という強い情熱を感じます。

そんなyamaneさんが今年新たに立ち上げたもうひとつのプロジェクトが、「マシンライブ北陸」。富山・金沢・福井のプレイヤーを中心とした電子楽器コミュニティです。

「きっかけは、kenji hamadaくんに島村楽器金沢フォーラス店主催のマシンライブイベントに誘ってもらったことでした。メンバーの話を聞くと、皆さん“同じ趣味の人と交流したい”という思いがあったみたいで。モジュラーシンセプレイヤーでもある副店長と、出演者を含む数人でライングループを作り、交流を続けています」

発足から間もないながら、はやくも動きが生まれているのだとか。

「“北陸”といっても各エリア同士の距離はありますが、ありがたいことに富山から福井へ、メンバーがライブに来てくださったりしています。個々の活動も盛んで、kenji hamadaさんは地元で精力的にライブを行っていますし、同じく富山のモジュラープレイヤー・Katayama Noiseさんは、Festival of Modular 2025 Osakaに出演される予定です。近いうちに金沢でのライブも計画しているので、興味のある方はぜひ気軽に参加してもらえたら嬉しいです」


楽器を通じてジャンルレスに繋がれるのが北陸の魅力

2025年。北陸におけるモジュラーシンセ・マシンライブのシーンは転換期を迎えているように感じます。

yamaneさんに、北陸の音楽シーンの魅力について伺いました。

「人口も少なく音楽が楽しめるお店も多くないので必然的にノンジャンルに人が集まります。そのなかで、ノイズやインプロといった、異なるジャンルで活躍されている方たちと、モジュラーシンセを通じて交流できるのは北陸の魅力かもしれませんね。それに、『ライブをする場所がないなら自分たちでつくる』という意識も強い。クラブとライブハウスの境界も、いい意味で曖昧です。公園でも公共の場所でもいい。どこかライブができる場所はないかと、日々目をぎらつかせているんです」

12月には台湾でのライブも決定しているというyamaneさん。福井を拠点にさまざまな地域をまたぎ、そして巻き込みながらモジュラーシーンを盛り上げていく。その姿は北陸にとどまらず、日本全国を見つめているようでもありました。

「モジュラーシンセは、良くも悪くも“たかが楽器”です。でも、個性的な見た目や、パッチングをするときの頭の使い方、ヘンテコリンな出音…これらが絶妙に作用することで、必然的に思慮深くなる。モジュラーシンセ自体がもつ個性の結果として、シーン全体のつながりの強さや、プレイヤーの演奏に対する意志の固さ、みたいなものが生まれている気がします。自分は今後モジュラーシンセを使って、音楽で何がしたいんだろうって考えたとき…、つまるところ“コミニケーション”なんだと。是非、私たちと交流しましょう!」

<編集後記>

去る10月4日、kenjiyamaneさんとYY-KKさんに呼んでいただき、福井フラットキッチンでライブをしました。その帰り道に話題になったのが、「福井はもともと“お忍び”の場所だったんだ」ということ。

大阪からそれほど遠くないものの、アクセスは不便。その不便さを逆手にとって、某ブランドの大物デザイナーやアーティストがパパラッチから逃れ、渡航前の打ち上げに立ち寄っていたのが福井だったそうです。それゆえに、不便な立地でありながら「地元民のカルチャーへの理解は深い」。

北陸新幹線が開業した現在。アクセスが格段に良くなったことで自分もまた、福井の濃密な音楽シーンを堪能することができたのでした。

(お雑煮/Patching for anything)

kenji yamane

DIYで組み上げたモジュラーシンセサイザーを操り独自の演奏を探求するミュージシャン。 非決定論的なリズムとトーンの探求をベースにした音楽を展開。Minimal Techno、Raw Technoを軸にIDMにも通ずるアプローチも交えながら、音楽とテクノロジーの関係を再構築している。

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